幸せですか？
第五回「日本再発見塾」を、岡山県新庄村で開催した。新庄村はかつて出雲街道の宿場町として繁栄し、今も当時の古い町並みとくらしを残している。この人口千人に満たない小さな村を舞台に、現代生活を見つめ直し、あらためて「幸せ」とは何なのかを考える二日間となった。
まず村のお年寄りから昔のくらしを伺った。登壇してくださったおばあさんの一人は、朝四時には起きて「朝な仕事」をし、夜は「夜なべ仕事」をして隠居の身となった今でも、秋には毎年二千個から三千個の干し柿を一人で作るそうだ。最後にインタビュアが一人一人に伺った。「今幸せですか？」。皆少し間を置いて答えた。「まあ何とか…」。
総勢二百名を収容できる宿泊施設が村にないため、参加者、スタッフ、講師は泊めていただくことになった。塾を歓迎するために、村を上げて半年間かけて準備をしてきてくださったという。杉と和紙を使って灯篭(とうろう)をつくり、街道から田んぼの脇の道まで灯(とも)してくれていた。一日目の塾終了後、それぞれの家へと向かう参加者に手作りの明かりが優しい。「ありがたいね…」と口々に参加者たち。どの家も深夜までおしゃべりに花が咲いたようだ。
私がお世話になったお宅では、七十一歳になるお母さんが白い割烹着(かっぽうぎ)姿で迎えてくださった。お母さんは家事や畑仕事をしながら、孫三人の面倒を見ている。ご主人は四年前に心臓の手術中に医療ミスで亡くなられたという。「先生も悪気があってなさったわけではないものね…」いつも笑顔のお母さんが、その話だけはとても寂しそうだった。
翌朝は、お母さんの手料理が炬燵(こたつ)の卓いっぱいに並んだ。米も、味噌(みそ)も野菜もみんなお母さんの手作りだ。さぞや忙しいでしょうと労(ねぎら)うとお母さんは晴れ晴れと笑って言った。「でも作るって楽しいよ！種から芽が出て、形になるんじゃもの！」。
閉講式が終わり、バスの出発の時間になると、参加者を見送りに民泊先の村人たちが次々と駆け付けてくださった。抱き合って別れを惜しむ家族もいる。
名残の紅葉を見上げて思った。果たして私は今幸せだろうか。初日に聞いた村のお年寄りの言葉が思い出された。「まあ何とか…」。背景にそれまでの厳しい生活と幾多の苦難を思わせる重い言葉だ。民泊先のお母さんが苦渋の末夫の死を受け入れたように、お年寄りたちも何かを諦(あきら)めて生きてこられたに違いない。それは厳しい自然を相手に生きてきた人たちだからこその懸命さと強さだ。何でも現金で解決する生活をしている都会人には、諦めることがむずかしくなってきている。人間の欲はきりがないからだ。幸せとは、何かを諦めることで見出せるものなのかもしれない。
柿吊つてだあれもゐない宿場街 黛まどか
＜東京新聞・中日新聞12月28日夕刊掲載「四季折々」より＞
開講式の様子
学生実行委員の挨拶
出雲街道で吟行
街道に風情を添えた灯篭は村人の手作り！
民泊先のお母さんと
二日間司会進行を務めてくださったお二人
料理人野��洋光さんのご指導の下、地元の食材を使ってお母さんたちが腕を揮ってくださいました！
夜の交流会
一日目の夜、民泊先のお宅では深夜まで話に花が咲きました！
翌朝選句の様子（「みんな上手いね！」と茂木健一郎さん）
優秀句発表！
大好評！「平成の歌垣」（上野誠さんと）
新庄村のキャラクター「ひめっ子ちゃん」も歌垣に参加♪
ひめっ子ちゃんもカップリング成立！（歌垣）
二日目の昼食は野外で♪
新庄村特産の「ひめのもち」を搗いてくださいました！
マユズミも餅つきに挑戦！
閉講式では司会（実はマジシャン？）が手品を披露♪（塩野米松さんと）
いよいよお別れです・・・（民泊先の家族が見送りに来てくださいました）
参加者が帰った後は、村の人たちとの新庄の魅力について意見交換しました（村民プログラム）
地元実行委員長の磯田さんと
笹野村長さんのお宅で（右端が村長さん）
無事終わって・・・踊る学生実行委員たち
無事終わって・・・飲む中年たち
ひめっ子ちゃんもお疲れさまでしたぁ〜！！！
