学生の皆さんへーきみの『B面の夏』俳句コンテストに寄せて

俳句は世界一短い詩、文学です。
文学とか詩と言われてしまうと、自分とは遠い世界と感じてしまうかもしれません。
だから俳句は5・7・5の言葉遊び、つぶやきだと思ってください。
嬉しいこと、楽しいこと、悔しいこと、悲しいこと、切ないこと…そんな思いを575でつぶやいてみませんか。

『万葉集』という最古の歌集がありますが、そこには片思いの切なさや大切な人を亡くした悲しみ、移り行く季節の美しさ、家族と別れて任地へと赴く兵士たちの嘆きの歌など今と少しも変わらない情景や感情が歌われています。中には夏痩せしている人を笑って「鰻でも食べろよ」とからかう歌もあります。私たちが土用の丑の日に鰻を食べるのと同じですね。
当時は今よりもはるかに生活も厳しく、生きることそのものが大変でした。そんな中でも人々は深呼吸をするように、あるいはつぶやくように歌を詠み、辛さを力に変えて生き抜いてきました。
俳句はその伝統の流れにあります。

「イマジン」という曲を作ったジョンレノンという人を知っていますか?
ジョンレノンは日本で俳句に出会い、衝撃を受けてそれ以来作る曲が変わったと言われています。以下に彼の言葉を引きます。
すべての虚飾を取り払ったあとには真実が残る。それこそが全体像を見せてくれる。長い華やかな詩の代わりに俳句はただ〝木のテーブルの上に置かれた白いボウルの中の黄色い花〟としか言わないんだ。俳句が僕が知っている詩の形式の中で一番美しいものだと思う。これからは自分の詞を俳句みたいにシンプルにしていきたい
そして「ラブ」や「イマジン」という名曲を作るのです。

俳句は世界一短い文学です。それでも句によっては一遍の小説に匹敵するような深淵な世界を表現することができます。
例えば、松尾芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」には、時空を超えたさまざまなストーリーを展開させることができます。

俳句のルールはたった一つ「有季定型」、つまり季語を一つ入れて575のリズムで詠むということです。
季語は、自然が豊かで四季がそれぞれに美しい日本だからこそ生まれた宝のような言葉です。日本人が四季の美しさを暮らしの中に取り入れてきたことの証です。

夏の季語には、蝉しぐれ、夕立、入道雲、夕焼、団扇などがあります。他にもソーダ水、かき氷、アイスクリーム、サンダル、プール、日焼、サングラス、水着、浴衣、クーラー、蚊取り線香、ナイターなど、今の私たちになじみ深いものもあります。
周りを見渡せば、私たちの暮らしは季語に囲まれています。

俳句がたった十七音節で様々なことを表現できるのは、季語のお蔭です。季語には日本人の情感や美意識が詰まっているのです。
例えば「蝉しぐれ」と言っただけで夏の強烈な日差しや蒸し暑さを思い出しますよね?昔友達と遊んだ場面や家族と旅行へ行った懐かしい時間、部活やお祭のシーンも思い出されることでしょう。また、その時の風の匂いや空気感、思いまでもが甦ってくると思います。季語にはそういった夏の情感や風景が詰まっています。誰もが瞬時に共有できる情景を表す言葉が季語なのです。

まずは自分の詠みたい情景・様子をみつけましょう。ちょっとした発見、あっという小さな感動でいいのです。思い浮かんだ言葉をどんどん書き出してみましょう。そしてそれらを5音・7音の言葉に整えます。
この時に「嬉しい・楽しい・悲しい」などの感情を入れないことがポイントです。
気持ちは季語に託して。季語はあなたの気持ちを十分に代弁してくれます。そしてそんなあなたの気持ちを読む人に伝えることができます。

その時の気持ちに合う季語を選んで組み合わせましょう。Happyな気分を詠みたいならHappyな気分を連想させる季語(例えば、入道雲、ひまわり、海開きなど)明るく元気の良い季語を選びましょう。
ちょっと切ないときには切なさを連想させる季語を探してみましょう(夕焼、蛍、夕顔など)。

大事な自分の気持ちを季語に託してつぶやく…それが俳句であり、世界一短い詩です。
二度と来ない今年の夏のワンシーンを575にしたためてみてください。たくさんのご応募をお待ちしています!

黛まどか

▼きみの『B面の夏』プロジェクト 特設ページ
https://www.madoka575.co.jp/lp/kiminopj

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次