黛まどか『B面の夏』掲載10句の中から「あなたの好きな一句」にご投票頂きました。

総選挙俳句一覧

① 恋はじまつてゐる香水を替へて
② ソーダ水つつく彼の名出るたびに
③ 浴衣着てマクドナルドに待ち合はす
④ 星涼しここにあなたのゐる不思議
⑤ 泳ぎ来て果実のやうな言葉投ぐ
⑥ 虹仰ぐサーフボードを砂に立て
⑦ 小悪魔になったつもりのサングラス
⑧ 水着きてつひに大胆にはなれず
⑨ 飛ぶ夢を見たくて夜の金魚たち
⑩ そして渚にひと夏の忘れもの

総選挙 結果発表
1位
星涼しここにあなたのゐる不思議
2位
ソーダ水つつく彼の名出るたびに
3位
飛ぶ夢を見たくて夜の金魚たち

皆さまのお気に入りの俳句はどれでしたか?
ご投票ありがとうございました。当選者には2024年9月下旬以降、賞品をお送りいたします。

言えないから俳句に託す。

その想いは言葉になりたい。
きみが感じた、きみの夏を、
5・7・5にしてみませんか。
動いた気持ちを俳句に託す夏。
素直で大胆な感性、お待ちしています。

※2024年8月19日をもちまして、応募受付を締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。

審査員

黛まどか(俳人)

山極壽一(人類学者・京都大学前総長)

テーマ

受賞作品発表

黛まどかコンテスト総評

90代から小学生まで幅広い年齢層から投句がありました。中には今回初めて俳句を作ったという方もいらっしゃいました。まさに「俳句」というジャンルの裾野の広さを象徴していると言っていいでしょう。
作品には、海、向日葵、夏帽子、蝉しぐれ、夕焼、ソーダ水など季語をめぐるまばゆい夏の断片が詠まれていました。また季節の輝きとは裏腹な切ない思いも詠まれていました。
寄せられた句をつなぎ合わせると、ジグゾーパズルのように誰にも通ずるひと夏が完成します。俳句の普遍性です。
俳句を詠む目を持つことで五感が敏くなり、今年の夏がより思い出深い豊かなものになったなら、大変嬉しく思います。 

作者のコメント
砂浜に彼女と眺めている夕焼け。まだ帰りたくないという気持ちを詠みました。

黛まどか講評
あんまり夕焼がきれいだから、もう少し一緒にいたい……思いが通い合う二人を夕焼が包みます。一般的には恋人同士の風景が浮かびますが、間もなく彼の世に旅立つ人との別れと解釈することもできます。下五の切れ「かな」が効果的で、読者もしばし見事な夕焼に身を置くことができます。時の流れは無常ですが、詠み留めることでその一瞬に永遠性が宿ります。

作者のコメント
B面の夏、旅の思い出として残った異国のコインを詠みました。

黛まどか講評
海外旅行から戻った作者でしょう。帰った途端に夏はA面からB面へと変わるのですから、特別な旅だったはずです。しかし、国はどこか、誰と行ったかという子細を俳句は述べません。ただ残されたコインに思い出のすべてが凝縮されています。動詞を一切使わず、「B面の夏」「外つ国のコイン」という二物をぶつけることで、想像を掻き立てる句となりました。

作者のコメント
この句は、以下のような場面を想像して詠みました。
動物園を訪れてカバの檻に目をやると、一頭のカバがプールから出て、空に向かってその大きな口を精一杯開けています。それは飼育員から餌をもらうためかもしれませんし、あくびをしているだけなのかもしれません。しかし、眩しそうにしているカバの上に広がる夏の青空を見ていると、今日は8月6日で広島忌だったことを思い出しました。もしかすると、カバも原爆の犠牲者に思いを馳せているのかもしれません。
ここからは私の感覚ですが、一種の緊張感を読み取れるかもしれないと思いました。カバが口を開けて広島忌の空を見上げるという場面から、あり得ないとは分かっていながら、一瞬原爆の存在を感じたからかもしれません。

山極壽一選評
河馬の大口はまるで空を丸ごと飲み込もうとしているかのように気持ちがいい。アフリカの川に浮かんでいる河馬も、動物園の水たまりにいる河馬もみんな大口を開ける。その大仰な態度に、ふと世界の空はつながっているなと感じた著者が、かつて広島の空を覆ったきのこ雲を思い浮かべたのであろう。あの原子爆弾の塵はこの大空のどこまで届いていたのか。世界が一瞬縮んで広島の悲劇がよみがえる。その地球の裂け目を河馬の口を借りて表現した秀逸な句である。

作者のコメント
夏になると、子どもの頃を思い出します。原風景というのでしょうか。青空と入道雲。蝉の声。近所のお友達。
いろんなことを知って、当たり前だけど「知る」前には戻れなくて。ずいぶん遠くまできたなあって、あの日見たような入道雲を見上げて詠みました。

作者のコメント
昨年、大学の見学のため、ある駅に降り立った時のことです。春から大学生になり、この街で一人暮らしを始めました。一人で入ったお店、友達と行ったお店、見知らぬ街に、お気に入りのお店や場所が増えています。行動範囲が広がったからこそ、また違う街にも行ってみたくなりました。

作者のコメント
子どもが7月に結婚式を挙げました。その準備の中で、6月中旬にウエディングドレスの仮縫いが出来上がったという連絡があり、試着をしに4人で伺った時の様子を俳句に詠みました。サイズもピッタリで、とても本人も喜んでおりました。

皆さま、たくさんのご投句をありがとうございました。
受賞作品の作者の皆さま、おめでとうございます。受賞の方には2024年9月下旬以降、副賞をお送りいたします。

<協賛の企業>

<後援の企業>

伝えたくて、言えなくて、俳句に託した恋。若者俳句ブームに火をつけた話題作(6万部突破)が復刊。

それまでの俳句ではタブーとされていたカタカナ言葉、そして恋・都会を詠み、俳句集としては異例のヒットを記録。

若者俳句のムーブメントを巻き起こした黛まどかのデビュー作が、発刊30周年を記念してよみがえる。

タイトル:『B面の夏』                    

初版:1994年

著者:黛まどか                        

復刊:2024年5月

出版社:KADOKAWA                

形式:文庫、約230ページ

著者プロフィール

黛まどか(まゆずみ まどか)

俳人。神奈川県生まれ。1994年、「B面の夏」50句で第40回角川俳句賞奨励賞を受賞。本年、初句集『B面の夏』発刊・俳人としてのデビューから30周年を迎える。2010年4月より一年間文化庁「文化交流使」として欧州で活動。スペインサンティアゴ巡礼道、韓国プサンーソウル、四国遍路など踏破。「歩いて詠む・歩いて書く」ことをライフワークとしている。オペラの台本執筆、校歌の作詞など多方面で活躍。現在、北里大学・京都橘大学・昭和女子大学客員教授。著書に、句集『北落師門』、随筆『暮らしの中の二十四節気』など多数。

公式サイト:https://www.madoka575.co.jp/

B面とは。

レコードやカセットテープの裏面が「B面」と呼ばれていました。句集『B面の夏』のB面は、「その続き」という意味です。

リメンバー1994

主なできごと

● 日本人女性初の宇宙飛行士、向井千秋さん宇宙へ
● 関西国際空港、開港
● イチロー、史上初となるシーズン200安打を達成
● 槙原寛己(読売ジャイアンツ)が完全試合を達成
● リレハンメルオリンピック開催
● 各地で記録的猛暑
● ドラマ「家なき子」が放送開始、大ヒット
● 円高加速、戦後初の100円突破
● 大江健三郎氏にノーベル文学賞
● 初の気象予報士国家試験が行われる

※プロジェクト事務局調べ

ヒット曲

1位:innocent world(Mr.Children)
2位:ロマンスの神様(広瀬香美)
3位:恋しさと せつなさと 心強さと(篠原涼子with t.komuro)
4位:Don’t Leave Me(B’z)
5位:空と君のあいだに / ファイト!(中島みゆき)
6位:Hello,my friend(松任谷由実)
7位:Survival dAnce ~no no cry more~(trf)
8位:あなただけ見つめてる(大黒摩季)
9位:Boy Meets Girl(trf)
10位:世界が終るまでは…(WANDS)

※プロジェクト事務局調べ

「B面」のまゆずみまどか